金氏徹平

井口直人さんの作品への応答として、金氏徹平さんは、ご自分の《白地図》シリーズに共通点が多いのではないかと、写真とテキストを送ってくれました。このシリーズは世界のいろいろな場所で制作されているインスタレーション(仮設展示)で、その場所で手に入るいろいろなものをテーブルの上に並べて、石膏をふりかけ、雪景色のようにします。井口さんが瞬間的にコピー機で作品を作るように、刹那的で即興的な創作の緊張感と面白さがここにはあります。

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井口さんにはまだお会いしたことはないのですが、作品や制作プロセスの動画を見て、感じるところはたくさんあります。コピー機を制作の道具とすることを自分で発見し、広告などの印刷物、様々な小さな物、自分の顔や手などの身体を同時にコピー機に乗せて印刷するということを20年あまり毎日続けているそうです。イメージや物そして身体を一枚のテーブル上に並べ刹那的に関係を構築する、継続する、複製することで小さなアクションを積み上げる、スピーディーな動き、コンビニのコピー機を使用することによる社会との接点、などがとても興味深いです。

今回、井口さんの作品への応答という形で自分自身の制作や作品を見直した時に、学生時代から20年近く継続しているプロジェクトの「白地図」を並べてみると面白いのではないかと考えました。この作品は小さな部屋の小さなテーブルの上に自らの手で片栗粉の雪を積もらせるという試みから始まり、後に石膏の粉に替わり、世界中の様々な都市で展開してきました。それらは、その場所で手に入る、価値、文脈、用途、出自、スケールなどがバラバラの物を集め、テーブルの上に並べ、石膏の粉を降り積もらせることでそれぞれを平等に繋ぎ合わせる刹那的な彫刻作品です。

コピー機の光、石膏の粉の降雪、それぞれが個人的な小さなアクションとしての人工的な自然現象ともいえるようなものを用いて新しいイメージを作り出し、大きな流れとしての身体性、時間、価値観などを揺さぶる可能性があるのではないか?その点において共通点はないだろうかと考えてみたりしています。もしそうであればお互いにこれからもこれを継続していく必然性があるような気がしています。

作品《白地図》シリーズ
展示と制作風景の写真、テキスト、2020年